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病気が分かると全ての症状の説明がつくのに.../奈良・東大阪・京都・三重・和歌山

2016年9月10日 12:18

みなさんこんにちは、ピュアメディカルクリニックの木幡(こわた)です。 

 

 

 

私たち医者は(美容外科は例外かも知れませんが…)、一般的に患者の訴えている症状からその人の持つ病気を類推し、検査をし、特定していくという作業をしていきます 

 

 

 

まず訴えている内容から、どのような病気を持っているかを類推するところからがスタートであり、かつ最も肝になる部分なのですが、この作業に大きく関係してくるのがその医者の持つ知識経験、そしてセンスと言えます。

 

例えば患者の持つ症状一つ一つは、それぞれ数十個くらいの病気が想定されるとしても、これらの症状がいくつか組み合わさってくることで数十個あったものが数個くらいに絞り込まれてきます。

そしてこの数個に的を絞った検査を行って最終的に診断を確定します。

 

 

 

 

 

この類推作業のことを「鑑別診断」Differential Diagnosisと呼びますが、どれだけ的確にこの鑑別診断が出来るかが、素早く正確な確定診断を導き出すと言っても良いでしょう。

 

 

 

 

 

思えばもう半年前に症状は出ていました。

ご飯を食べるスピードが目に見えるほど落ち始めたのです。

我が家の愛犬のことです。

 

それと同時に後ろ足の震え。

はじめは「椎間板ヘルニア」かと思われました。

なんでも胴の長い犬は自重を支えるために背骨に負荷がかかるため、ヘルニアになりやすいのだとか。

痛くて食欲が落ちているのだろう、と痛み止めを処方されました。

しかし、改善には至りませんでした。

 

 

 

 

 

心臓に異常が見つかりやすい犬種だから、とレントゲンを撮ってもらう。

獣医によって異常があると言われたり、これは異常ではないと言われたり。

心臓の薬を一時服用してもこれも症状の改善にはつながらず。

 

 

 

 

 

そうしている内に食べるスピードが更に落ち、一日2回食べていた食事が一日1回に減りました。

 

自分から積極的に食べようとしません。

そのころから口臭がキツくなり、口の片側だけからヨダレが良く出るようになりました。

ヨダレが出ている側の口の周囲がただれたようになっていきます。

獣医を受診すると歯周病かも、と。

 

ただ全身麻酔をしないと歯石除去も出来なければ、歯周病の進行度合いも分からないと。

人間と違って、検査や治療の時にじっとできない犬の場合、それなりの検査・治療をしようと思えば全身麻酔をかけなければなりません。

 

そして「全身麻酔はリスクがある」から家族で相談して決めてください、と。

 

  

 

歯周病に対して、抗生物質の処方を受けたものの、やはりこれでも改善しません。

それぞれの症状に対して、何かしらの病気の可能性の指摘を受け、それに対応した治療を受けるということを繰り返しても、一向に改善の気配がありません。

この時あたりから、何かもっと深刻なものが原因であることを見過ごされているのでは、というイヤな予感がします。

食欲が落ち、食べる量が少なくなったせいもあり、2か月ほどで体重が3キロ近くも落ちてしまいました。

 

  

 

そして歯周病から歯髄炎、炎症が骨にまで到達して骨が溶かされている可能性があり、それによる痛みが食欲低下を引き起こし、ヨダレや口臭にもつながっているかも知れない。

 

ということで全身麻酔をかけ、歯科治療を受ける決断をしました。

そしてこの段階になって、初めて分かったのです。

歯周病は確かにあり、歯茎も腫れ、歯周ポケットには歯石がびっしり。

 

しかしそんなことよりも、舌根部の大きな悪性腫瘍

 

咽頭の右側壁にすでに浸潤までしていたのです。

全身麻酔をかける時、口の中に挿管する際に見つかったのです。

 

 

 

 

 

この時になって初めて、すべての症状が結びついたのです。

食欲低下、体重減、悪臭のするヨダレ・鼻水、そして最近ではいびき。

答えが分かってしまえば、すぐに症状の説明はつくのに、症状しかわからない時点では答えからはほど遠い診断。

5人の獣医にかかっても分からなかったのです。

 

 

 

 

 

犬の1年は人間の4年に相当するそうです。

 

ですから人間の場合と比べると悪性腫瘍も早く成長します。

「○○かも知れないからこの薬で様子を見ましょう」で貴重な時間は過ぎ、「全身麻酔はリスクだから」で時間は更に過ぎ去り。

 

治療や検査とは何でもリスク対ベネフィット、つまりどんなものであってもリスクはあるけれど、それを上回るメリットがあるからやることに踏み切るのです。

その決定は、専門家でなければ難しいです。

しかし今やクレーム社会。

何かあったら責任をとらされるからと、意思決定を患者側に任せる。

これは押しつけがましくない側面もありますが、やりようによっては不親切な行為となってしまいます。

 

  

 

私は、今回の私たちの一件で、医師の責任とは何なのか、深く考えさせられました。

人や動物の一生とは、増えることのない時間の定期預金を少しずつ切り崩して生きているようなものです。

その時間を大切にして差し上げるために、勉強をし、知識・経験を蓄え、親身になって相手のお役に立てるよう努力をする。

 

すべて解決は出来ないかも知れないけれど、そういう姿勢を持ち続けることがこうした状況を少しでも回避できることにつながりますし、仮に上手くいかなかったとしてもその結末に納得がいきやすいのではないかと思いました。

一般の保険診療科であれ、歯科であれ、獣医科であれ、美容外科であれ、同じだと思うのですが、みなさんはどのように感じられたでしょうか。

 

 

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